仮想通貨の購入は「販売所」または「取引所」で行うことができますが、取引所一択です。
販売所はスプレッドと呼ばれる買値と売値の差がとんでもなく大きいため、売買するたびに大きな損失が生じるためです。スプレッドは高いもので10%を超えることもあります。
この記事では、よりお得に仮想通貨を買える取引所の板取引についてわかりやすく解説します。
取引所の板の見方
取引所の「板」とは、通貨を買いたい人・売りたい人の注文一覧です。
この板の場合、上から順に
- 1コインあたり102円で、1000コイン売りたい人がいる
- 1コインあたり101円で、1200コイン売りたい人がいる
- 1コインあたり100円で、400コイン売りたい人がいる
- 1コインあたり99円で、230コイン買いたい人がいる
- 1コインあたり98円で、1100コイン買いたい人がいる
- 1コインあたり97円で、2000コイン買いたい人がいる
といった感じです。
図にまとめるとこのようになります。ただし、実際には同じ値段で複数の人が注文していることが多いです。
このままでは1件も売買は成立しません。売る側は100円より安く売りたくないですし、買う側は99円より高く買いたくないからです。
ここで新しく「1コインあたり100円で、200コイン買います」という注文が入ったとしましょう。
売りたい人の最低金額100円と、買いたい人の最高金額100円が同じになりました。
この瞬間、1コインあたり100円で、200コインの売買が成立します。売買の成立は約定(やくじょう)とも言います。
より正確に言うと、「買いたい人の最高金額が、売りたい人の最低金額以上になった時」に売買が成立します。
成行(なりゆき)注文
ここからは、代表的な3種類の注文について解説します。
成行注文のしくみ
「成行(なりゆき)注文」は売買の値段を指定しない注文です。
先ほどの板を例として解説します。
例えばここで、「成行で200コインの買い注文」をするとします。
すると、最も安い売り注文である「1コインあたり100円」で200コインを購入することができます。
成行注文では価格を指定しないので、その時点で最も有利な価格で取引をすることになります。つまり、
- 成行で買い注文をする場合、一番安く売ってくれる人から買う
- 成行で売り注文をする場合、一番高く買ってくれる人に売る
ということです。
成行注文のメリット・デメリット
●メリット
注文をしてすぐに売買を成立させることができます。
注文価格の入力をしなくてもよいので、簡単かつスムーズに売買ができます。注文価格の入力ミスも起こりません。
また、価格の変動が激しい時でも、ほぼ確実に売買を成立させることができます。
●デメリット
想定外の高値・安値で売買が成立してしまうことがあります。
例えば上の図で、3000コインを成行で売るとします。
- 3000コインのうち、230コインは99円で売れます。
- 残りの2770コインのうち、1100コインは98円で売れます。
- 残りの1670コインは97円で売ることになります。
このように大量の成行注文を入れると、取引価格がどんどんと不利になってしまう可能性があります。
また、大量の取引をしない時でも注意が必要です。自分以外の人が大量の取引をした時も、同様に価格が一瞬で上下する場合があります。
板が薄い(指値注文の量が少ない)取引所や、暴騰・暴落時の成行注文には注意が必要です。
指値(さしね)注文
指値注文のしくみ
注文方法の2つ目は、売買の値段を指定する「指値(さしね)注文」です。
例えばここで「99円の指値で100コインの買い注文」をします。
すると、板は次の図のように更新されます。
99円の買い注文の数量が、230から330に増えました。成行注文とは違い、注文をしてすぐに売買が成立するとは限りません。
この後「99円で売ります」という注文が来れば、自分の買い注文が成立することになります。
(ただし、同じ99円でも先に注文が入っていた230コイン分の売買が優先されます)
先ほどは99円の買い指値を入れましたが、もしここで「100円の指値で100コインの買い注文」をすれば、注文後すぐに売買が成立します。
ただし、自分が注文をするまでの間に、誰かが「成行で400コイン以上の買い注文」をしてしまうと、100円で売ってくれる人がいなくなってしまいます。
この場合、すぐに売買は成立しません。また誰かが100円で売ってくれるのを待つことになります。
さらに、現在の価格より不利な価格を指定することもできます。
例えばここで「101円の指値で100コインの買い注文」をします。
板の状態がこのままであれば、101円ではなく100円で買うことができます。指定した値段よりも安く売ってくれる人がいるなら、その値段で売買が成立するしくみになっているためです。
また、自分が注文をするまでの間に、誰かが「成行で400コインの買い注文」をしてしまった場合でも、101円で買うことができます。
指値注文のメリット・デメリット
●メリット
自分の希望通りの価格(または、それよりも有利な価格)で必ず売買できます。大量の注文が入って価格が大きく動いた時でも、想定外の値段で売買が成立することはありません。
また、現在よりも有利な価格を指定しておくことで、「価格が○円まで上がったら売る」などのように利益確定に使うこともできます。
●デメリット
注文をしてすぐに売買が成立するとは限りません。特に現在の価格より有利な価格を指定した時などは、長時間待っても売買が成立しない可能性があります。
また、注文の個数だけでなく値段まで指定しないといけないので、注文までに時間がかかってしまいます。価格を入力しているうちに相場が大きく動いてしまうこともあります。
逆指値注文(ストップ注文)
逆指値注文(ストップ注文)のしくみ
注文方法の3つ目は、売買の値段を指定する「逆指値(ぎゃくさしね)注文」です。「ストップ注文」とも呼ばれます。
「価格が○円以下になったら売りたい」というように、現在の相場よりも不利な価格を指定します。
具体的な例を紹介しましょう。例えば、通貨の価格が下のようなグラフになっているとします。
価格が100円の時に買いました。ただ、寝ている間に悪いニュースが発表され、価格が急落してしまったら困ります。
そこで、「90円の逆指値で売り注文」をしておきます。現在よりも不利な価格です。
翌朝。寝ている間に価格が急落していましたが、90円で逆指値の売り注文をしておいたおかげで、90円で売ることができていました。
このように逆指値注文を利用すれば、損失を一定以下に抑えることができます。
ちなみに、逆指値ではなく指値注文で「現在よりも不利な価格」を指定しまうと、すぐに売買が成立してしまいます。
例えば、価格が100円の時に「90円の指値で売り注文」をするとしましょう。すると、現在100円付近で買いたい人がいるわけですから、上の板の場合は99円での売却が成立してしまうことになります。
よって、「価格が思い通りに動かなかった時のための保険」には、逆指値注文を使う必要があります。
より正確な表現では、
- 逆指値注文の売り注文では、指定しておいた価格以下に相場の価格が下がった場合、成行での売り注文が発注されます。
- 逆指値注文の買い注文では、指定しておいた価格以上に相場の価格が上がった場合、成行での買い注文が発注されます。
なお、指定した価格以下(以上)に到達した際、成行ではなく指値で発注する注文は「ストップリミット注文」と呼ばれます。
その他にも様々な注文方法やテクニックがあります。長期保有の方はほとんど使わないと思いますが…。
逆指値注文(ストップ注文)のメリット・デメリット
●メリット
現在の相場よりも不利な価格を指定することで、思い通りに相場が動かなかった時の損失を抑えることができます。忙しくて相場をチェックできない時のリスクを小さくすることが可能です。
様々な活用方法があり、うまく使いこなすことでトレードが上達します。例えば、買ってから価格が上昇した通貨に対して、買った価格よりも高い値段で逆指値注文をしておけば、確実に利益を得ることができます。
●デメリット
逆指値注文をしたことで逆に損失が大きくなってしまう可能性もあります。
例えば、「90円の逆指値で売り注文」をしていたとします。
価格が90円以下になったため売却が成立しましたが、その後すぐに価格が回復してしまいました。このように、逆指値が必ずしもうまく機能するとは限りません。